スウェーデンの心理学者アンジェラ・アオラの著書『不倫の心理学』から前回までは不倫に走った男女の顛末を紹介しました。ヴェラとヨーアルは他の異性との出会いを求めて、家庭の外へと関心が移っていきました。
何で長年連れ添った相手では我慢できないのか? その謎を解く鍵は人間の心の仕組みにありました。

 

「不倫の心理学」その3・性的欲望と不確実性の問題

 

高揚と安定とは両立しない

 

著者アンジェラはヴェラやヨーアルとあったときしばしば情熱と安全安心のバランスが話題になったといいます。
人間は安心を求めています。安心は生命が生き残るための必要条件です。しかし、人間は同時に快楽や興奮も求めています。この2つの欲求は常に拮抗しています。
欲望にはある程度不確実性が必要です。

ベルギーのカップル・カウンセラーはこう主張しています。

「相手を長く愛したければ見慣れた関係に未知の要素を取り入れる必要がある」

自己啓発セミナーで有名なアンソニー・ロビンスは「パートナーシップにおける情熱の量は、あなたが持ちこたえられる不確実性の量に正比例する」と語っています。
人は過去の経験から学び時間を効率的に使う回路は安全なもので構築されています。人間関係も同じで、接触回数が増えれば増えるほど、人物に好印象を持つようになりより魅力的だと思うようになります。
これは裏を返せば馴染みのあるものは欲望によくない影響を及ぼすことになります。家庭的で安心感が増す予測可能なパートナーは以前と同じ程度には欲望を刺激しなくなります。
だから生活の結びつきが増せば増すほど性生活を心配する理由が増えるのです。

 

長期的な関係でも情熱が燃やし続けられる秘訣

 

親密さが増すと相手の幸福への関心が高まり、「相手を傷つけてしまうのではないか」という心配も含まれます。
しかし、性的に興奮するためには、相手への心配を断ち切り、自分自身の快楽を追求する必要があります。欲望にはある程度利己主義が必要になります。性的な欲求に集中し、生き生きと、自発的に、不安から解放される必要があるのです。
欲望を呼び起こすためには一定の距離が必要です。

つまり、パートナーとの関係が長くなれば長くなるほど欲望が薄れて、逆に浮気のリスクが高まります。既婚女性の不倫の確率は7年目にピークに達し、その後は減少。男性は不倫のリスクは18年目までに徐々に減少し、その後、上昇。またパートナーの妊娠中や出産後の数ヶ月はパートナーシップの特定の時期において男性の浮気の可能性は高まります。
浮気を防止する方法は、パートナーシップに緊張感とサプライズを演出することです。2人の関係が強い感情的反応を引き起こし続ければ、情熱は高まり、浮気に強い愛情を育めます。