弁護士法人てんとうむし法律事務所著「法律知識ゼロからでもわかる男の離婚入門」
から、男性が離婚する場合の法律的解決法をお伝えします。

 

弁護士が答える悩み別男の離婚のポイント

 

妻が浮気をしている場合の離婚

 

40代男性の会社員で妻は30代のパート勤めで子供はいません。
妻がパートの同僚と浮気をしているようで離婚したい。
遅くに帰ってくるなどのあまりにも怪しい行動が増えたため、浮気しているだろと問いただしたところ、浮気を認めて謝り一旦はおさまったように見えた。
しかし、継続しているみたいなのでもう耐えられないので離婚したい。

 

浮気と不貞行為は違う

 

最終的に訴訟になったとして離婚が認められるためには離婚原因が必要になります。
その中に不貞行為があります。
浮気をしているのだから不貞行為になるので離婚できると考えるのは早急すぎます。
ここで言う不貞行為とは性交渉のこのことで、訴訟で離婚が認められるかは性交渉をしていたか否かがポイントになります。
性交渉がなかったとしてもただ親しくしていただけでも、程度によっては婚姻を継続し難い重大な事由に当たる場合もあるので、性交渉の有無が分からなかったとしても離婚を検討するのも十分あり得ます。

 

妻や浮気相手への慰謝料請求には確実な証拠が必要

 

離婚について妻や浮気相手への慰謝料請求書を考える上で大事なのは証拠の問題です。
今回のケースだと妻の怪しい行動があり、問いただしたところ性交渉を認めて謝ったという事情があります。
しかし怪しい行動だけでは性交渉まで立証できるものではありません。
メールや LINE のやりとり、ラブホテルに二人が入っていく写真などは証拠になります。
そのような証拠があれば必ず確保しておくべきです。
最も性交渉をしていた事実を直接証明するのは難しいので証拠を積み上げてどれだけ立証できるかがポイントになります。
今回のケースでは妻が浮気を認めたので証拠はいらないのではないかと思われるかもしれません。
しかし一度浮気を認めたとしても交渉の段階になった時に、自分の不利な発言を残さないために、一転浮気を否定するケースも少なくありません 。
「あまりに激しく問い詰められたので、実際は性交渉の事実はないのに、言ってしまった」など、前の証言を打ち消す言い訳はいくらでも考えられます。

そこで相手が認めた時にはすぐに書面化しましょう。
書面ではなくても録音でも証拠になります。
やはり妻の浮気が間違いなくて性交渉のしっかりした証拠を掴むのであれば、探偵事務所に浮気調査を依頼するのが一番です。

 

生まれた子供が本当に自分の子供か分からない

 

35歳男性の会社員で妻は32歳の専業主婦です。
結婚をして3年ぐらいになって単身赴任になりました。
単身赴任でしたがほぼ毎週末、月に3、4回は自宅に戻っていました。
妻は単身赴任をするようになってから他の男と不倫関係にあったようです。
そうとは知らず妻と普通に旅行に行って夫婦関係を継続していました。
そんな矢先に子供ができたと妻から報告がありました。
初めての子供なので嬉しい気持ちもある反面妻の不倫関係のこともあり、自分の子供ではないのではと疑っています。
こういう場合男性と子供との関係は法律的にはどうなるのでしょうか?

 

DNA 鑑定をすればほぼ間違いなく親子関係がわかる

 

自分の子供かどうかを確かめる方法としては DNA 鑑定があります。
DNA 鑑定の検査技術が発達したこともあり以前に比べて費用も安くなり複数の業者もあるので個人的にも比較的簡単に使える手段となりました。
しかもほぼ100%の確率で親子関係がわかるようになっています。

 

本当に自分の子でなくても法律上は自分の子供?

 

妻が婚姻中に懐胎した子供は夫の子供と推定されこれを「嫡出推定」と言います。
そして婚姻成立の日から200日を経過した後、又は婚姻の解消もしくは取消しの日から300日以内に生まれた子供も婚姻中に懐胎さいたものと推定され、夫の子供と推定されます。

このケースでは結婚期間中に妻が子供を懐胎していますので嫡出推定がなされ法律上夫の子供ということになります。

 

親子関係を解消する方法

 

そこで「嫡出否認調停」ないし「嫡出否認の訴え」を行います。
子供が生まれたことを知ってから1年以内であれば夫が嫡出否認調停を申し立て、ないし嫡出否認の訴えを提起して、それが認められれば親子関係を解消することができます。
子供が生まれたことを知ってから1年以内に提出しなければならないので注意してください。
子供が生まれたことを知ってから一年を過ぎてしまった場合でも親子関係不存在確認調停ないし親子関係不存在確認訴訟を提起しそれが認められれば親子関係を解消できます。
しかし親子関係不存在確認訴訟では妻が子供を懐胎する時期に既に夫婦関係が破綻していた事実や、または遠隔地に住んでおり夫婦間に性的関係を持つ機会がないことを証明しない限り親子関係の不存在が認められません。
この男性の場合は事実上の離婚状態や性的関係を持つ機会がなかったとは言えないので1年以内に嫡出否認調停ない子嫡出否認の訴えを行う必要があります。

 

DNA鑑定では親子ではないという判定が出たのに?

 

この男性と同じような状況でDNA鑑定では親子ではないと証明されているのに、最高裁は親子関係の解消を認めませんでした。

それはなぜでしょう?

夫と子供には生物学上の父子関係は認められないものの、血のつながりのない子供を育てないといけない夫の負担よりも、子供の身分関係が不安定になるのを防ぐためでした。

最高裁は子供の身分関係の安定性の方を重視しているからです。

本当の父親が不明のケースもあるので、子供の父親がいなくなることになり、配慮しているのです。

しかし、妻の責任追及とは別問題です。

妻には責任があり、夫はそれを追求することが可能です。