長らく不動の地位を築いてきた「性格の不一致」をおびやかす存在が……それが「精神的虐待」です。男女共に長らく5位辺りにランキングされていたのに、令和4年度では性格の不一致に続いて男性は第2位、女性は「生活費を渡さない」に続いて第3位に浮上しています。夫側が訴える離婚理由の第2位になっているのが驚きです。
なぜ離婚理由に「精神的虐待」が増えたのか?
「性格の不一致」という言葉は漠然としているため、その他の異性関係、浪費、暴力など理由を隠すためにも使われていますし、「精神的虐待」つまり「モラルハラスメント」という言葉が認知されたために、昔は性格の不一致として処理されていたものが、「精神的虐待」として処理されるようになったことも考えられるでしょう。
女性の場合は、第2位「生活費を渡さない」第4位「暴力をふるう」第5「酒を飲み過ぎる」など、夫にこれをされるとまともで安全な生活が送れない理由があるのに対し、男性が妻の収入に依存することはまれですし、妻の暴力(実際には妻側の暴力も増えています)や酒で、夫が受けるダメージは少ないでしょう。ですから男性側の「精神的虐待」の方が上位になったと推測できます。
「精神的虐待」を理由に離婚を迫られたら
モラハラ離婚は高橋ジョージさんと三船美佳さんの離婚騒動で話題になりました。「精神的虐待」を受けたことを証明するのは精神科の医師の診断書です。配偶者の言動によりうつやPTSDになったと医師に判断されて、診断書を書いてもらったらオッケー。お医者さんは、刑事でも探偵でもないのだから裏を取る必要はありません。全面的に患者の言い分を聞いて診断書を書くだけです。しかし、もし患者の言った内容が診断書をもらうためのウソ、もっと言うと、離婚したいためのウソであっても、診断書は証拠として通用します。
逆にパートナーに対し「精神的虐待」を行った覚えはないのに、濡れ衣を着せられても、それを覆すことは至難の業です。自分は虐待のつもりはなくても、自分の言動に相手が傷ついていたらそれはモラハラになりますから。また自分がモラ夫、モラ妻でないことを証明するためには、夫婦が一緒にいるときには常にビデオカメラを回したり、音声を録画したりしておかなければならなくなります。そのため、モラハラがないことを証明するのはかなり難しいと言っていいでしょう。
つまり、精神的虐待は訴える方が圧倒的有利で、訴えられる方は不利で無防備です。職場でも、家庭でも法的遵守は必須のようです。
反対にパートナーの「精神的虐待」を理由に離婚したい場合は、パートナーの言動を録画・録音をしておく。日記をつけて、パートナーの言動を克明に記録しておくと後に有力な証拠になります。