1994年からテレビ東京系で放送されている長寿番組「開運!なんでも鑑定団
」司会者は交替しても、かわらず出演しているのが「いい仕事してますね」でおおなじみのお宝を鑑定する側の古美術鑑定家・中島誠之助さんです。
その中島さんが禁断のニセモノやニセモノ師たちについて書いた本が「ニセモノ師たち」です。
古い家には真偽はともかく必ず年季の入ってそうな古い家具や古い調度品がありました。
現在は家具はニトリやIKEA、小物は100均など使い捨てたり、いらなくなったらメルカリで処分。
いいものを大事にしていつまでも使うという習慣が無くなったので、ほとんど家にあるものに実はものすごく価値がある……という状況がありえなくなってしまいました。
あるとしたら大好きだったレコードやおもちゃ、本などがレアものに変化する。
どちらかというと同じレギュラー鑑定士の北原照久さんよりのお宝はあるにしても、骨董品に触れること自体がなくなりそうです。
「ニセモノ師たち」からニセモノに騙されないための秘訣を学びます。
ニセモノに引っかかる3条件
中島さんはニセモノに騙されやすい条件を「ニセモノに引っかかる3条件」と銘打って注意を呼びかけています。
第1条件 その品物を買ったら儲かると思ったとき
中島さんは骨董品を購入することは投資ではないと断言しています。
ビジネスならば安く仕入れて、高く売らないと利益は出ません。より高い利益を見こして、「儲けてやろう」というスケベ根性に騙す方がつけ込んでくるのです。
中島さんは本書で「騙される素人の3原則」というのも掲げていますが、その第一が「欲が深い人」。儲けたいという条件とピッタリ一致していますね。先入観なしに自分の審美眼で惚れた品物を選ぶのが原則のようです。
中島さんは「そもそもホンモノとは儲からない」と言います。
考えてみると、グルメにしても、古美術、量産できない作品にしてもチャンとした道具を使って、丁寧なもの作りをしたら、原価率が上がって、けして儲かるビジネスではないことが分かります。
2021年に放送されたドラマ「俺の家の話」でも、代々人間国宝になる能楽師の家庭が描かれました。一見、華やかでお金持ちに見えますが、実際は伝統芸能を継続するために経済的はかなり大変である内情が描かれていました。
逆にニセモノであれば限りなく原価を0円にして、人を騙せば莫大な利益を得ることができますね。
第2条件 勉強不足
どんな分野でもそうでしょうが、目を養うためには美術品の伝統や美術を勉強する必要があります。ところが第1条件の「儲けたい欲」だけを基準に考えると、ついつい知識の吸収がおろそかになって、コロッと騙されてしまいます。
本当に好きなジャンルならば自然と、もっと深く知りたいという気持ちがあるので、自然となんでも覚えてしまいそうです。しかし、そうならないのはやはり出発点が、「好き」よりも「儲けたい」という気持ちだからでしょう。
第3条件 おカネがあること
紹介した「騙される素人の3原則」の第3原則では「適度に金があり、教養があること」と書かれています。
たとえ、代々の資産家であれば、地位と財産にともない、それなりの教養やものを見る目が養われていますが、ゼロから財を成した人=つまり成金はお金があっても、土台となる教養やものを見る目がありません。
それが欠けている人が、自分も骨董を所有するほどの人物になったことを、確認したい、あるいは他人にアピールしたいという人が、見る目のないニセモノを掴まされやすいということなのでしょう。
逆にお金があっても、そもそも美術品に対して全く興味関心がなければ、調度品にはお金をかけません。
骨董には成金のコンプレックスを刺激するところがあるのでしょう。
ホンモノはホンモノを知る。ニセモノにはニセモノが集まる
往年の大スター高峰秀子さんは、子役の頃から映画界で活躍していて、骨董品の知識教養は皆無だったそうです。ところが、ある日、日本橋をハイヤーで移動しているときに見かけた壺に一目惚れして購入します。その壺は日本でも珍しい逸品だったとか。
一流の人は一流を見抜ける力を持っているということです。
逆にニセモノはローカルのマイナーな所に集まるそうです。
ホンモノを見極める力のない人にはニセモノばかりが集まるのだとか。
素人が気軽に手を出せる世界ではないのを痛感します。
ちなみに「ニセモノ師」と呼ばれるニセモノを巧みに売りつける人たちは、話上手で人を惹き付ける能力があって人気者だそうです。
こう語る中島さんでも、何度もニセモノを掴まされて苦い思いをしています。「ニセモノ師たち」ではニセモノとニセモノを売りつけた人々との体験を赤裸々に語っています。
最後に
「ほら吹きは罪がないから人に好かれるが、嘘つきは人に迷惑をかけるから嫌われる」という言葉が印象に残りました。
興味があったらご一読ください。