毒親という言葉が普及して久しいですが、最近ではかつて毒親に悩まされた子供達が、今度は子供を育てる側にまわる。毒親ループが話題になっています。
また隠れ虐待、教育虐待といって一見虐待には見えず、端からはいい親のように見えますが、習い事や塾を押しつける新たな虐待も登場しています。
今回は「毒親」という言葉を普及させたスーザン・フォワード「毒になる親」の続編「不幸にする親」から、毒親からもたらされる5つのゆがみとそこから脱却する方法を探っていきます。
子供の心に生じる5つのゆがみ
コントロールばかりする親から育った子供は、心のバランスが崩れやすく若いうちから人生が不安定になりやすくなります。
親の言動にさらされた度合いが強いほどゆがんだものの見方を受け継いでしまうようです。
5つのゆがみの弊害を見てみると、反抗的になったり反社会的になったりする場合と、状況に流されて必要以上に組織や他人に従順になる場合の両極端に分かれます。
権力や能力についての見方のゆがみ
子供に完全な服従と依存を要求して、惨めな思いをさせてきた親の子供は、権力や能力についてゆがんだ見方を身につける可能性が高くなります。
自分は人より能力が低いと感じる、逆に自分は人よりも優れた人物だと錯覚します。
自分で意志決定ができない、強圧的な態度をとる人のいいなりになる、また逆にすぐに反発して軽蔑するようになります。
感情・感覚・願望に関する歪み
親から感情や感覚、願望などを極度に制限されたり、逆にそれを煽られたりすると、子供の感情にゆがみが出てきます。
楽しいはずのことをしても、居心地の悪さを感じて、自分の感情を素直に出せなくなります。
本来いい関係きづけるはずの人とは離れて、自分を傷つけるような人と一緒にいるようになります。
考えのゆがみ
一方的な親の言い分ばかりを聞いて育つと、自分の考えに自信がもてず、間違っている意見にも従うようになります。
逆に即断して物事を決断しようとします。
責任逃れをしたかと思えば、逆に自分の責任でもないのに背負い込む場合もあります。
人間関係に関するゆがみ
極端に親からの支配、逆に過保護、過干渉、放置されて育った子供は、大人になっても正常な人間関係が築けません。
親しくしたい人に近づけない。あるいは、信頼してはいけない人を盲目的に信頼してしまう。
人との関わりの中で幸せを感じ取れなくなります。
アイディンティーに対するゆがみ
親から否定されてばかりいると、自分の全てに自信が持てません。
自分の能力を実際より低く思ったり、本来の力を発揮できなかったり、実力以下のことをしようとする傾向が大きくなります。
本来持っている個性を否定して、偽りの自分を作って、体裁を作ろうとする場合もあります。
もし、自分を偽りのキャラを打ち出して、成果が出て有名になっても、心が充たされないまま大きな喪失感を抱えるようになります。
やがては、大きなひずみとなって本人にのしかかってきます。
ゆがみを持った子供の行動
以上のようなゆがみを持つと子供は、
・極端に親の言いなりになる
・極端に親に反抗する
・目立つ行動で親から注目を集める
・透明人間のように気配を消して目立たなくする
・親以上になろうとして、他をしのごうとする
するようになります。
これら5つのタイプにもそれぞれメリットもありますが、デメリットもあり、時間を経ていくとデメリットの方が増えていきます。
5つのゆがみを捨て去る方法
「不幸にする親」では5つのゆがみから脱出するために「精神的に家を出る」ことを推奨しています。
実際に家出するわけじゃありませんが、両親からの精神的な分離と独立をしないかぎり、そのゆがみを直すことはできないというのです。
親からの分離するために、第一に、親と自分との今までの関係を冷静に観察します。
今まで毒親はたくみに自分の意見を子供に押しつけてきました。
それらを分析して、その縛りからの独立を心の中で宣言するのです。別に面と向かって言う必要はありませんが、宣言してからも親の関与が収束するワケではありません。
宣言した直後は、感情、渇望、不安、葛藤など心に嵐が吹き荒れたように乱れますが、それを乗り越えた後、揺るぎのない平安が心に宿ります。
精神的な親との独立がうまくいくと、親をただ一人の人間として受け入れるようになります。
それから親との関係性が変化していきます。
親を許せるようになって、関係性を再構築して絆を取り戻せる場合もあります。
しかし、残念ながら有害なままの親もいます。
そういう場合は距離を置くか、あるいは断絶することになるかもしれません。
それでも、その結果は人生にとってプラスに働くでしょう。
著者はあとがきでこれらの変革は順序通りに、短時間に行われるものではないと注意しています。
何度も失敗を重ねながらも、辛抱強く変えていく努力すれば、少しずつ親との関係性が変わっていきます。
興味があったら「不幸になる親」を手にとってみてください。