長らく男性の方が多いと言われていた発達障害の1つADHD=注意欠陥・多動症ですが最近では比率が男女ほぼ同じということが分かってきました。
高齢者にもADHDも認められて、認知症と誤診されるケースもあります。
しつけやゲームやスマホが原因ではなく、遺伝的な要素が明らかになりました。
中島美鈴さん著「ADHD脳で困っている私がしあわせになる方法」はイラスト満載でADHDについて分かりやすく知ることができて、さらにその対処法が詳しく書かれています。
また医療機関でADHDと診断されなくても、その傾向があるADHDタイプにも役立つ情報です。その中からポイントを紹介いたします。
ADHDの主な特徴
ADHDは通常の仕事をこなすのが困難で約3割の人が仕事につけていないと言われています。
「何をやっても長続きしない」「仕事をする気がない」と誤解されてきましたが、多くの人が続けたくても続けられないという障害です。
バラエティ番組「ノブナカなんなん?」でも、6年間無職のまま家でゴロゴロする女性が紹介されていましたが、その生態を見るとADHD気質見られる兆候がありました。
番組では完全に仕事しないダメ人間扱いでしたが……
働かないのではなくて、働けないのです。
ADHDの特徴は多動性、不注意、衝動性と言われています。
なぜADHDになるのかは実際のところよく分かっていないのだそうです。
・脳の形態が通常の人の脳と違っている。
・危険を察知する脳の右半球の部分が小さい。
・自己コントロールを司る前頭葉の活動性が低い
などの特徴から、「実行機能障害」という仮説が立てられています。
わかりやすく言うと、
・計画を立てる
・集中して実践する
・別の刺激に飛びつきたい刺激を抑える
・最後までやり遂げる
これらの機能は20代くらいには身につくものとされていますが、それが未熟なのがADHDという発達障害です。
「抑制制御」「報酬遅延」「時間処理」という3つの経路が障害されているからだという仮説があります。
抑制制御=ブレーキが効かないだから事故る
抑制制御は簡単に言えば気持ちがあちこちにそれてしまう気持ちを抑えつけて、自分の意志でコントロールすることです。
「心のブレーキの効きが悪い」と言いかえられます。
出かける前にもう1回持ち物を見直せば、忘れ物は防止できるはずなのに、出かけたい気持ちを抑えきれずに家を出てしまう。
時間内に仕事が終わらせないといけないのに、買いたいものを思いつくと頭をよぎるとネットでチェックせずにはいられない。
「衝動をコントロールできない」できないことがあらゆるトラブルを引き起こす要因になっています。
報酬遅延=待てない、続かない、ときどきやめられない
報酬遅延とは、ご褒美が遅いのが我慢できないということです。
おあずけの時間が長いほど、たくさんいいものご褒美がもらえるとしても、早くご褒美をもらえることを選んでしまうのです。
この障害をもつと
・長期間続けないと結果が出ないものに対してがんばり続けられない
なにごとも三日坊主で終了し、新しいプロジェクトにワクワクするのは最初だけですぐに飽きてしまいます。
・がまんできない
相手の話をさえぎって、自分の話をはじめてしまうという傾向も、報酬遅延に耐えられない性格からきています。
一方で「やめたいのに、やめられない」という衝動にもつながっており、「過集中」のめり込みすぎてしまう傾向があります。
ゲームやギャンブルに依存してしまいがちで、アリとキリギリスで言えば完全にキリギリス型ですね。
後先考えずに、面白いことにのめり込んでいたら、童話のキリギリスのようになってしまいます。
時間処理=時計のリズムは乱れがち
通常の人のように時間を見積ることができません。
自分では10分でできると思っていたことも40分もかかってしまう。
5分しかたっていないつもりが15分経過している。
そのために締め切りも破ってしまって、信頼を失ってしまいます。
時間は気にしないといいながら、実は時間におわれる生活を送らざるをえなくなっています。
3つの経路が遮断されることで複合的な弊害も……
ブレーキがきかない、我慢できない、時間のリズムが乱れるは複合的に障害が現れる場合もあります。
「電気代の支払いが遅れる」「余裕で時間に間に合うはずなのに大遅刻」「片付け方がわからず家が汚部屋状態」
などなど、日常生活に様々な支障を起こします。
根性では直らない! 便利なツールを使いこなして上手に自分を使いこなそう
「今度こそ気をつける」「あしたから心を入れ替える」根性論・精神論では長続きしません。
失敗を減らすためには、仕組みが必要なのです。
中島さんはADHD対策をボルダリングに例えています。
失敗しない仕組みをたくさん用意しておくと、ボルダリングの足場と同じ役目をして、失敗をできるだけせずにゴールにたどり着くことができます。
自分の特性を知って、使いこなす。
自分のダメさを手なづけて、ADHDでも強く生き抜いていきましょう。