脳科学者中野信子さんが書いたいじめについて書かれた著書のタイトルは「人はいじめをやめられない」です。

ショッキングなタイトルですが、次の文章が更に衝撃的です。

本気でいじめを防止しようと考えるのではあれば、

いじめが止まないのは、いじめが「やめられないほど楽しい」ものだからなのではないかと言うかの、考えたくもないような可能性を、あえて吟味してみる必要があるのではないでしょうか?

脳にはいじめることを快楽に思う部分があって、そこを刺激されるといじめがやめられなくなります。

あまり、人間の本性は善であると考えたいものですが、現実にいじめは後を絶たないのが事実です。

人間の本性を知って、いじめを防ぐにはどうすればいいのかを探ります。

 

脳のメカニズムがいじめを生む

いじめは集団生活をする人間の法則?

原始時代、狩猟スタイルだった人類はライオンや虎などに比べてまことに貧弱な体格で、そのままで、あっという間に野獣の餌食になって人類は滅んでしまったでしょう。

そこで、人類は集団生活をする選択をします。

大勢で集まって協力しあいことで、生存競争を生き残ってきたのです。

前頭前皮質は社会的な行動に必要な機能を司っています。

人類は集団生活を歩むことによって脳を発達させてきたのです。

では、集団生活の敵になるものとはなんでしょう?

敵や将来的に敵になりそうな他の集団のように思います。

しかし、敵や他の集団は、同じ敵に向かって戦うため、共同体の絆を深める役目があるのです。

集団にとって憎むべき存在は、集団の調和を乱す内部のはみだし者です。

ルール破りが横行すれば、集団の秩序が乱れて、崩壊につながりかねません。

村中で特定の人をのけものにする【村八分】ですが、村の秩序を守るため、また集団で仮想敵を作っていくことで、村の結束をさらに高めるものなのです。

それを【サンクション=制裁行動】と言い、集団になればなるほど発生します。

愛情ホルモンオキシトシンがいじめを生む?

中野信子さんの著書「不倫」を紹介した時も、同じようにオキシトシンが登場しました。

愛情ホルモンと呼ばれ、仲間や家族の絆を深めるのに必要な脳内伝達物質オキシトシンですが、仲間意識や規範意識が度を過ぎると、他を排斥するような動きに転じてるのです。

子供たちの間にいじめが多いのも、仲間意識が強すぎるのが原因です。

暴力や暴言など、直接の攻撃がなくても、仲間外れにするだけで、子供がいじめと認識し、傷つくのも子供に帰属意識が強いからです。

赤信号 みんなで渡れば怖くない?

集団の一員で行動すると、良い悪いを判断すると、道徳心や倫理観に関わる内側の前頭前野の領域の反応が落ちることが分かっています。

普段は大人しい人でも、軍隊に入って戦争モードになると、残虐な行為を平気で行うのも、日常の倫理観が薄らいでしまうからだそうです。

そして、集団になると、自分と敵対する人を不当に低く評価する傾向が高くなります。

自分にとって好ましくない顔は敵に違いないという【外集団バイアス】が生まれ、オキシトシンによる排外感情が生まれるのです。

アメリカの女性教師が生徒に差別の愚かさを知るために、目の色で差別するという実験を行うと、仲が良かったクラスに亀裂が生まれて、争うようになりました。

人間はもともと善良であっても、状況によって簡単に人を攻撃する人格になるのです。

日本はいじめが起こりやすい国?

安心ホルモンと呼ばれるセロトニン。

セロトニンが多い人は楽観的な人に、少ない人は不安やうつ傾向が多いと言います。

日本人の遺伝子を解析するとセロトニンを少なく作る遺伝子型だということが分かりました。

気質的にもともと不安を感じやすい性質なのです。

日本人には心配性な人、他人の意見や顔色をうかがい、空気を読むなどが多くなります。

不安を感じる気質がエスカレートしすぎると、必要以上に自分より異質なものに排他的になってしまいます。

いじめは脳内麻薬ドーパミンを活性化する

脳が快感を感じるのはドーパミンを放出するからです。

いじめを行っている場合でもドーパミンが放出されます。

たとえ、客観的に見て理不尽な考え方でも、前述の通り集団になると通常の倫理観がぼやけます。

集団からはみ出しているものを【正義】の名の元に、制裁をくわえて行きます。

自分が正しいことをしていると思い込むと、いじめが正当化され、冷静な判断力が失われています。

SNSの炎上騒ぎを起こす人も、自分の中の正義を実行しているの過ぎないのです。